テトロドトキシン中毒
テトロドトキシン(TTX)中毒は、珍しいが、台湾、日本、東南アジアで頻繁に見られる。 アメリカでも稀ではあるが、重要な存在である。 EMの文献では3例しか報告されていない。 今回、フグを食べたことによるTTX中毒6例の集団発生を報告する。 2001年4月17日,台湾海峡で中国大陸の漁民が船上でフグを共食いし,TTX中毒の集団発生が発生した。 6例はいずれも中年男性(32-49歳)であった。 発症は摂取後2〜3時間からで,症状は口唇のしびれ,先端感覚鈍麻,息苦しさなどであった. 搬送と初期蘇生が遅れた結果、1名が完全心停止となったが、心肺蘇生に成功し、自然循環が回復した。 この患者を除いて,初期の酸塩基異常は重症度と一致せず,軽度の過呼吸がよくみられた(5人中4人). 完全停止状態で来院した患者は,アトロピン静注とドーパミン注入にもかかわらず,文献上ほとんど言及されていない難治性徐脈(完全房室ブロック)のため,入院後1日で死亡した. 残りの患者は,神経系および心肺系の症状(筋力低下,低血圧,低酸素血症,高炭酸ガス)を呈したものもあったが,重大な後遺症なく生存し,短期の観察および支持療法を経て退院となった. 軽度の低換気状態の患者の中には,気管内挿管や人工呼吸のサポートなしに良好に回復した者もいた. 積極的な支持療法が間に合えば、ほとんどの患者で良好な転帰を得ることができる。 したがって、病院前および救急外来での適切な換気支援(バッグバルブマスクの装着または良好な換気支援による気管内挿管)は、呼吸不全の患者にとって必須である。 ほとんどの患者は摂取後6時間以内に症状が発現するが、20時間まで遅れて発現する患者も少なからずいる。 したがって、TTX中毒ですぐに呼吸不全が顕著にならない患者については、感受性が異なり、個々の経過が予測できないため、少なくとも24時間の集中的な呼吸状態の監視が必要である。 (Am J Emerg Med 2003;21:51-54. Copyright 2003, Elsevier Science (USA). All rights reserved.)