CRISPR/Cas9による豚のアルブミンを生産ヒトcDNAの豚アルブミン遺伝子座へのノックインを介した接合体

ヒト血清アルブミン(HSA)は最も豊富な血漿タンパク質で、血漿のオンコスティック圧維持などヒト生理学において重要な恒常性機能を担っています。 体液分布の調節、小分子の輸送など1。 肝不全や外傷性ショックなど、多くの重症疾患に処方される2。 ヒト血液の供給不足とヒト血液に関連するリスクのため、ヒトアルブミンの代替生産が長い間模索されてきた。 ブタでは以前、アルブミン-GFP融合という形で優性遺伝子を発現させ、組換えHSAの生産が試みられました3。 しかし、トランスジェニックアプローチでは、内因性ブタアルブミンの存在により、rHSAの分離・精製に問題がありました。 そこで、CRISPR/Cas9システムのゲノム改変能力を活かし、ブタのアルブミン遺伝子座にヒトアルブミンcDNAをノックし、ブタにrHSAを作製することを目指した。 ヒトALB cDNAとSV40ポリAシグナル配列(合計2368 bp)を開始コドン直下のブタAlb遺伝子座に挿入することにより、ヒトALBがブタ内在性アルブミンの転写制御下で発現すると同時に、ブタ内在性アルブミンの発現をブロックすることを期待した(図1a)。 そこで、開始コドン領域(ATGを含む直前の5′)を標的としたsgRNAを設計し、そのインサートの両側に1kbの相同性配列を挟んだ標的断片(相同組換えのドナー)を作製しました(図1a)。 ドナーに用いた5′相同性配列は開始コドンまで走っているため、sgRNA配列を含んでおり、ドナーとしてのsgRNAや相同組換え後のノックインアレルの標的となる可能性がある。 それを防ぐために、開始コドンの直前にsgRNA配列の6bp(gccacc)を挿入しました。 このsgRNAをin vitroで転写し、精製した後、Cas9 mRNA4および標的断片を含む円形ベクターとともに受精卵に注入した。 卵子の供給源は、Bama minipig5である。 注入された胚は1~2時間培養された後,発情同期させた雌に移植された。 ~300個の胚が10匹の雌に移植され、そのうち5匹が妊娠し、合計16匹の生きた仔が誕生した。

Figure 1

ヒトALBをブタのAlb遺伝子にノックインする方法

(a)ノックイン戦略の図。 (b)ファウンダーのジェノタイピング。 PRCプライマーは(a)に示す。 (c)プライマー対e/f(a)で得られたPCR産物の塩基配列を決定した結果。 産物をクローニングし、最大12クローン(#9について)の塩基配列を決定した。

子豚16頭が約4週齢の時に耳先を切り取り、ゲノムDNAを得て、ジェノタイピングを実施した。 ノックインに成功したかどうかを判断するために、挿入部位の5′と3′の両末端を評価した。 プライマーはa/bとc/dの2組を使用した(図1a)。 プライマーaは使用した相同性の5′末端の外側、bはヒトALB(挿入部)上、cはヒトALB上、dは相同性の3′末端の外側である。 Fig.1bに示すように、16匹の子豚は全て意図したノックインアレルを保有している。 増幅されたDNA断片を全てクローニングし、塩基配列を決定した。 それらは予想された相同組換え産物であった(Fig. S1)。 次に、これらの子豚の野生型アレルの状態を調べた。 プライマーeおよびf(挿入物内に含まれる)(図1a)は、野生型遺伝子座から705 bpの断片を、ノックインアレルから3085 bpの断片を増幅するはずである。 予想通り、いずれも3085bpの断片が生成された。 しかし、予想に反して、16サンプルのうち7サンプル(#5, 6, 9, 10, 12, 13, 15)からは705 bpの野生型断片が得られ、残りは700 bp前後の微弱な産物が得られた(図1b)。 一部の子豚では明らかに野生型対立遺伝子が欠如していることから、ノックインが両方の対立遺伝子で起こった可能性がある。 あるいは、野生型アレルのプライマーa配列が削除されるような編集が行われ、野生型アレルの増幅ができなくなった可能性も考えられる。 実際、一部の子豚では、増幅された断片のサイズが予測された705 bpと異なることから、野生型対立遺伝子に編集が起こったと考えられる(Fig. 1b)。 このことを確認するために、増幅されたすべての断片をクローニングし、塩基配列を決定した。 図1cに示すように、数塩基対の変化だけのものもあったが、すべて編集されていた(それゆえ705bpに見える)。 これらの編集されたアレルのうち、10番子豚と12番子豚で見つかったものが興味深い。 10番のものは、ブタの配列の29bp(ATGから3′端まで)をドナーの配列の36bp(ATGの5bpとそれ以降の26bp)に置き換えたものである。 どのようにしてこのようなことが起こったのかは不明である。 12では、編集されたアレルが2種類あり、アレル総数は3であることから、このブタにはモザイクがあることがわかるが、モザイクはCas9/sgRNAの接合体注入により作出された動物でしばしば認められる6,7,8,9,10.

sgRNAでオフターゲットが発生したかどうかを判断するために、CRISPRデザインツール(http://tools.genome-engineering.org)からの提案に基づいて、オフターゲットとなり得る上位4箇所を選び、14番子豚の穂先ゲノムDNAからこれらの部位を含む断片を増幅させた。 この断片をT4EN Iアッセイに供した4。 図S2に示すように、オフターゲット編集は見いだせなかった。 しかし、他の遺伝子座や他の15頭のトランスジェニックブタにおいてオフターゲット編集が起こった可能性を排除することはできなかった。

ヒトALBのノックインが成功したことを実証したので、これらのノックイン子豚の血漿中にヒトアルブミンが検出されるかどうかを調べようとした。 図2aに示すように、すべての子豚の血漿中に、ヒトアルブミンに対して特異的な抗体で検出可能なヒトアルブミンが含まれていたが、そのレベルは様々であり、これは少なくとも二つの要因、すなわち両方の対立遺伝子がノックインされているかどうか、モザイク化の程度(特に肝臓における)の結果であると思われる。 7のレベルは、野生型ブタAlb対立遺伝子が明らかに欠如しているにもかかわらず、ブロットを長時間露光した後でのみ確認できる非常に低いレベルである(Fig.1a)。 全体として、そのレベルは成人ヒト血清中のレベルよりはるかに低い。 豚の血中アルブミン濃度は年齢とともに増加し、生後6ヶ月までに成人ヒトと同様のレベルに達することが知られている11.

図2

血液中のヒトALBの分析

(a)Western blotによる創設豚の血液中のヒトアルブミン濃度の検出.図2

抗体ノック子豚の血漿中に検出されたrHSAが本当にヒトアルブミンであるかを確認するために、2つの血漿サンプル(子豚2番と6番)をマススペクトル分析に供した。 #2はノックインアレルのホモ接合体、#6はノックインアレルと変異アレル(フレームシフト)を1つずつ含むことが明らかとなった(Fig.1)。 0.5μlの血漿をSDS-PAGEで分離し、70KD前後のタンパク質をトリプシンでインゲル消化した。 トリプシンペプチドはゲルから溶出し、乾燥後再溶解して液体クロマトグラフィーで分離し、質量分析した。 その結果、2番子豚では14種類、6番子豚では15種類のユニークなヒトALBトリプシンペプチドが検出された(図2b)。 ヒトのペプチドFKDLGEENFKとブタのペプチドFKDLGEQYFK(いずれも2番子豚由来)のM/Zスペクトルを図S3に示した。 ピーク面積を測定することにより、2つのペプチドを選んで定量を行った。 ウェスタンブロットの結果と一致して、これら2つのペプチドは、#2において#6よりもはるかに(〜5倍)豊富であった(図2c)。 これらの結果は、抗体によって検出されたrHSAが本物のヒトアルブミンであることを示している。

耳先から分離したDNAのジェノタイピングにより、#2および#6の両方には野生型ブタAlbアリルが存在しないか編集されていた(図1b,c)。 しかし、両サンプルからブタアルブミン由来のトリプシンペプチドが依然として検出されたが、その量はかなり少なかった(図2c)。 興味深いことに、ヒトのペプチドの存在量は大きく異なるにもかかわらず、ブタのペプチドの存在量は2つのサンプルでほぼ同じであった。 これらの結果は、両子豚の血液中に検出されたブタALBの原因となる野生型(あるいはヘテロ型)の肝細胞が、同程度の数含まれていることを示唆している。 しかし、このような野生型アレルを含む細胞は、耳朶には存在しないか、あるいは極めて低い割合で存在するため、野生型アレルをPCR増幅することができなかった可能性がある。 さらに、内部プローブ(ヒトALB CDSの3′半分)を用いたサザンブロット解析により、子豚1、4および5においてドナー配列の追加挿入が存在することが示された(図S4)。 ノックインアレルが次世代に伝達されるかどうかを調べるため、生殖成熟した#2(雄、ホモ)と#5(雌、ヘテロ)を交配させた。 この交配で6匹の仔が生まれた。 そのうち4匹(#1、3、4、6)はノックイン対立遺伝子ホモ接合(AlbH/H、Hはヒト)、2匹(#2、5)はヘテロ接合(AlbP/H、Pは豚)(図3a)であった。 #5番と6番は生後2週間ほどで下痢で死亡した。 残りの子豚の生後4週間の血液中のヒトアルブミンの発現を解析した。 Fig.3bに示すように、全ての子豚の血液中にヒトアルブミンが存在することがわかった。 興味深いことに、ヘテロ接合体(#2)のヒトアルブミンのレベルは、ホモ接合体のそれよりもずっと低かった。 これが個体差の結果なのか、それともノックインアレルが野生型アレルによって何らかの形で抑制されているのかはわからない。

図3

ノックインアレルの胚系列伝達

(a) F1子孫のPCR遺伝子型判定。 使用したプライマーは図1と同じである。 (b)F1子豚の血液中のヒトアルブミンをウェスタンブロットで検出。 各子豚の0.5μl血漿をSDS-PAGEで分離し、解析した。 C、野生型豚の血漿。 M、分子量マーカー。

我々は、ブタのAlb遺伝子座にノックしたヒトALB cDNAを持つブタの発生に成功したことを示す。 これは、最近Haiら12と我々13によって報告されたブタの接合体における単純な遺伝子編集より一歩進んだものである。 大型家畜は、生物医学的タンパク質製品のバイオリアクターとして追求されている14,15,16,17,18,19,20. 通常、これらのタンパク質のコード配列は、トランスジーンとして必要な転写制御要素とともにゲノムにランダムに挿入されるが、トランスジーンの発現が短期間であるなど、多くの問題がある。 ブタの接合体において相同組換えが非常に効率的に起こることを証明したことは、より優れたバイオリアクターや、より望ましい形質を持つ家畜系統の開発への扉を開くものである

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